B-Side Blues

B-Side Blues

Official髭男dismOfficial髭男dism
作詞:藤原聡 作曲:藤原聡
歌詞考察2026.03.02

B-Side Blues【Official髭男dism】歌詞の意味を考察!”心のB面”が語る過ぎ去った日々への愛しさとは

「少し固いアイス」を頬張るような、何気ない日常のワンシーンから始まるこの楽曲。Official髭男dismのメジャー3rdアルバム『Rejoice』のラストナンバーとして収録された「B-Side Blues」は、2024年7月24日にデジタル配信、同年7月31日にCDリリースされました。キリン 午後の紅茶のCMソングとしても起用され、目黒蓮さんと中条あやみさんが出演するCMとともに多くのリスナーの耳に届いた一曲です。派手なタイアップソングとは異なる、じんわりと心に沁みるこの楽曲には、バンドとしての歩みや、時代の中で失われていくものへの想いが詰まっています。今回は、この楽曲に込められたメッセージを歌詞から紐解いていきます。

アーティスト・楽曲情報

Official髭男dism(通称:ヒゲダン)は、2012年に島根県で結成された4人組ピアノポップバンドです。藤原聡(Vo/Pf)、小笹大輔(Gt)、楢﨑誠(Ba/Sax)、松浦匡希(Dr)からなり、2018年にメジャーデビュー。「Pretender」「Subtitle」「ミックスナッツ」など数多くのヒット曲を世に送り出し、ブラックミュージックをルーツに持つ多彩なサウンドと、藤原聡の卓越した歌唱力・作詞力で全世代から支持を集めています。

「B-Side Blues」は、全16曲を収録したアルバム『Rejoice』の最後を飾る楽曲です。ROCKIN’ON JAPANのインタビューで藤原は、この曲がもともと「Bunkamura Blues」というタイトルだったことを明かしています。長年使い続けた愛着あるBunkamura Studioが閉鎖されたことをきっかけに生まれた楽曲で、「大人にも心の中に少しの寂しさがあるはずで、その寂しさをなくしたくないという気持ちを込めた」と語っています。レコーディングは久しぶりの一発録りで行われ、2テイク目の音源が採用されたというエピソードからも、バンドの生の息遣いが刻まれた特別な一曲であることが伝わります。

考察①:「少し固いアイス」に潜むノスタルジー

夕飯を食べきって 少し固いアイスを頬張って
何が面白かったんだっけ? 思い出せもしない事の方が多いって
月並みの悩みを手に入れたりなんかして
虚しさなんてもう似合わないね

冒頭から描かれるのは、ごくありふれた夕食後のひとときです。「少し固いアイス」という具体的な描写が印象的で、冷凍庫から出したばかりの、まだ溶けきっていないアイスを頬張る感触がリアルに伝わってきます。この何気ない日常の一コマこそが、のちに「通り過ぎた日々」として愛おしくなるものなのではないでしょうか。

「何が面白かったんだっけ?」という問いかけには、楽しかったはずの時間がいつの間にか記憶の彼方へ消えていく切なさが込められています。しかし「虚しさなんてもう似合わないね」という一節は、かつて虚しさを感じていた時期を経て、今はもう月並みな悩みさえも手に入れられる「普通の幸せ」の中にいることを示唆しています。大人になるということは、ドラマチックな感情から遠ざかる代わりに、穏やかな日常を手にすることでもあるのかもしれません。

考察②:「笑い合っていられた日々の向こう」が示す過去と未来の約束

話題なんて過ぎ去ってしまうくらいが実は丁度良くて
笑い合っていられた日々の向こうでまた笑おう

「話題なんて過ぎ去ってしまうくらいが実は丁度良くて」という一節には、ヒゲダンというバンドが歩んできた道のりが重なります。ヒットチャートの話題は移り変わり、世間の注目は次々と新しいものへ向かっていく。しかし、そうした移ろいを受け入れた上で「丁度良い」と言い切る姿勢には、表面的な話題性ではなく、本質的な繋がりを大切にしたいという想いが感じられます。

「笑い合っていられた日々の向こうでまた笑おう」は、過去を懐かしむだけの後ろ向きな言葉ではなく、過去の延長線上にある未来で再び笑い合おうという前向きな宣言です。終わってしまった時間に執着するのではなく、あの日々の「続き」をこれからも紡いでいこうとする意志が、この楽曲全体を貫くテーマの予兆として響いています。

考察③:「変な顔ばっかしてた」と写真に刻まれた”B面”の記憶

通り過ぎた日々を束ねながら 眺めた写真の中 変な顔ばっかしてた
きっともう少し長居したら たらればばっかまた 溢してしまうな
またほら 浸り出してしまうな

1番のサビでは、写真を眺めるという行為を通じて過去の日々と向き合う主人公の姿が描かれます。「変な顔ばっかしてた」というフレーズが絶妙で、カメラの前でキメ顔をするのではなく、ふざけ合って変な顔をしていた瞬間、まさに「B面」の自分たちこそが、最も愛おしい記憶なのだと伝えています。

「たらればばっかまた溢してしまうな」という言葉には、思い出に浸ると「あの時こうしていれば」「もっとこうだったら」という後悔や未練が溢れ出てしまう危うさが表現されています。「またほら 浸り出してしまうな」と自覚しながらも止められない、その不器用さは、誰もが共感できる心の動きではないでしょうか。過去を美化するのでも切り捨てるのでもない、ただ「浸ってしまう」という人間らしい感情がこの楽曲の温かみを生んでいます。

考察④:「歳などとりたくない」という消えゆく風景への叫び

世間は忙しくて 次の何かを掘って建て出して
何が昔はあったんだっけ? 思い馳せもしなくなるならば
歳などとりたくない そんな叫び声さえ残したままでいたい
音も景色も味も匂いもちゃんと せめて心の中だけは

2番に入ると、視点は個人の記憶から社会全体の移り変わりへと広がっていきます。「次の何かを掘って建て出して」という表現は、スクラップ&ビルドを繰り返す現代社会そのものを映し出しています。藤原がインタビューで語ったBunkamura Studioの閉鎖や、コロナ禍で失われていった場所への想いが、この歌詞に色濃く反映されていると考えられます。

「歳などとりたくない そんな叫び声さえ残したままでいたい」における「歳をとりたくない」は、外見の老いではなく、時間の経過とともに感受性が鈍くなり、かつて大切だったものへの思いを忘れていくことへの抵抗を表しているのではないでしょうか。「音も景色も味も匂いもちゃんと」と五感を列挙する表現は、記憶を肉体的な感覚として保ち続けたいという切実な願いであり、たとえ場所やモノが消えても「せめて心の中だけは」残していたいという祈りのような一節です。

考察⑤:「そんな面倒な心が宝物だったりするんだ」というB面の肯定

通り過ぎた日々を抱えたまま 生きてく僕らはただ 変な顔ばっかしては
ちゃんと移ろう社会の最中 たらればばっかまだ 溢してしまうんだ
そんな面倒な心が 宝物だったりするんだ

2番のサビでは、1番の「束ねながら」が「抱えたまま」に、「溢してしまうな」が「溢してしまうんだ」へと変化しています。この微妙な言い換えが示すのは、過去の日々を整理するのではなく、そのまま抱え込んで生きていくことの肯定です。「ちゃんと移ろう社会の最中」で、自分だけは未練がましく「たられば」を溢し続けている。その不器用さを恥じるのではなく「面倒な心」と認めた上で「宝物」と呼ぶところに、この楽曲の核心があります。

タイトルの「B-Side」とはまさにこの心のことでしょう。人前では見せない、表に出しにくい心の裏側。バンド自身もコメントで「A面ではない、表に出にくい、出しにくい、心の裏側」と表現しています。合理的に生きる「A面」の自分だけでなく、感傷的で非効率な「B面」の自分もまた、かけがえのない存在なのだというメッセージが、静かに、しかし確かに響いています。

考察⑥:「失くしちゃなんないものはただ『続き』だけなんだ」という楽曲が辿り着いた答え

分厚い世界がやがて 保存期限いつか迎え
僕らを追い出してしまったとしても
多分大抵困らないくらいでいいよ 大抵忘れられるくらいがいいの
通り過ぎた日々を愛しながら 生きてく僕らはただ 変な顔ばっかしては
きっと振り返った時にまた バカばっかだったなぁ そう言えりゃいいんだ
今日からほら またふざけ合ってきゃいいんだ
失くしちゃなんないものはただ「続き」だけなんだ

ブリッジの「分厚い世界がやがて保存期限いつか迎え」という表現は、世界そのものにも”賞味期限”があるという大胆な比喩です。自分たちが存在した証である場所や時代が、いつかすべて消えてしまったとしても、その覚悟を「大抵困らないくらいでいいよ」「大抵忘れられるくらいがいいの」と穏やかに受け入れる姿勢が印象的です。

最後のサビでは「束ねながら」「抱えたまま」と変化してきた表現が「愛しながら」に到達します。過去を整理するのでも、ただ抱え込むのでもなく、「愛する」という能動的な行為へと昇華された瞬間です。そして「バカばっかだったなぁ そう言えりゃいいんだ」という一節は、振り返った時に後悔ではなく笑いが出てくるような日々を送りたいという願いです。

楽曲の最後に置かれた「失くしちゃなんないものはただ『続き』だけなんだ」というフレーズこそが、アルバム『Rejoice』全体の結論であり、Official髭男dismというバンドの信念そのものではないでしょうか。藤原はインタビューで、喉を壊した経験から「続き」が薄れる恐怖を味わったことを示唆しています。だからこそ、場所が消えても、記憶が薄れても、「続き」さえあれば音楽は生き続ける。バンドが歌い続ける限り、Bunkamura Studioで生まれた曲も、あの日の変な顔の写真も、すべてが「続き」の中に息づいていく。そんな静かで力強い確信が、このラストフレーズには込められています。

独自の視点:「B-Side」という概念が照らすヒゲダンの現在地

「B-Side」という言葉は、レコードのB面、つまりシングルの表題曲ではない、いわばメインストリームの裏側を意味します。アルバム『Rejoice』は「ミックスナッツ」「Subtitle」「TATTOO」といった大ヒットシングル(まさにA面の楽曲たち)を多数収録した作品ですが、その最後にあえて「B-Side」と名付けた楽曲を配置したことに、バンドの深い意図を感じます。

小笹大輔は本曲をアルバムのラストに置いた理由について、「アルバムならではのバラード」であり「聴いてくれた人が最後に染みる曲になってほしい」と語っています。華やかなヒット曲の裏側で、バンドが本当に大切にしてきた想い、それこそがこの「B-Side Blues」なのかもしれません。また、一発録りという手法も象徴的で、作り込まれた楽曲とは異なる、メンバー4人の”生の呼吸”が刻まれた楽曲となっている点も、B面的な素朴さと誠実さを体現しています。

まとめ

「B-Side Blues」は、過ぎ去った日々を愛おしみながらも、未来への「続き」を手放さないでいようとする楽曲です。派手さやキャッチーさとは無縁の、静かで温かなこの一曲は、アルバム『Rejoice』すなわち「大きな喜び」の最後にふさわしい、人生の機微に寄り添うナンバーとなっています。

藤原聡が歌う「面倒な心が宝物」という言葉は、効率化やスピードが求められる現代社会において、立ち止まって過去に想いを馳せることの意味を問いかけています。忘れていく記憶も、変わっていく風景も、それ自体は止められないけれど、「せめて心の中だけは」という祈りが、多くのリスナーの胸に響くのではないでしょうか。

ぜひ、あなた自身の「通り過ぎた日々」を思い浮かべながら聴いてみてください。写真の中の変な顔、あの日の匂い、もう行けなくなった場所。そうした記憶の一つひとつが、きっと「続き」の中で生き続けていることに気づかせてくれるはずです。

楽曲情報

  • 曲名:B-Side Blues
  • アーティスト:Official髭男dism
  • 作詞:藤原聡
  • 作曲:藤原聡
  • 編曲:Official髭男dism
  • リリース日:2024年7月24日(デジタル配信)/ 2024年7月31日(CD発売)
  • 収録作品:メジャー3rdアルバム『Rejoice』
  • タイアップ:キリン 午後の紅茶 CMソング