「あのね、なんかね最近心がざわついてて」——そんな赤裸々な言葉で幕を開けるこの楽曲。2025年12月17日にリリースされた9thミニアルバム『カレーライス』に収録された「犬も喰わない」は、Saucy Dogがバンド自身をテーマに描いた、ファン必聴の一曲です。
結成から12年、メンバーの脱退や再始動など、さまざまな困難を乗り越えてきた3人。音楽ナタリーのインタビューでボーカルの石原慎也は「これからもSaucy Dogとして最後まで向き合っていきたいという気持ちで書いた曲」と語っています。「Saucy Dogを知っていれば知っているほど、よさをわかってもらえる曲」とも明かしており、バンドの歴史を知るファンにとっては特別な意味を持つ楽曲といえるでしょう。
今回は、バンド名「Saucy Dog」の”犬”と呼応するタイトルに込められた想い、そして歌詞から読み取れるメッセージを深掘りしていきます。
アーティスト・楽曲情報
Saucy Dog(サウシードッグ)は、石原慎也(Vo/Gt)、秋澤和貴(B)、せとゆいか(Dr/Cho)からなる3ピースロックバンドです。2013年に大阪で結成され、2016年のMASH A&Rオーディションでグランプリを受賞。代表曲「シンデレラボーイ」「いつか」のMVは再生回数1億回を超え、2022年にはNHK紅白歌合戦にも出場を果たしました。石原の繊細かつ力強い歌声と、日常の感情をリアルに切り取る歌詞が多くのリスナーの心を掴んでいます。
「犬も喰わない」は、音楽ナタリーのインタビューで「サウシー自体をテーマにした曲」と紹介されており、バンドの原点回帰と未来への決意が込められた楽曲です。石原は「バンドを始めたての頃の気持ちを思い出したいよね」という3人の思いがきっかけだったと語っており、結成当初のワクワク感と、困難を乗り越えてきた軌跡が歌詞に反映されています。
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考察①:「心がざわついてて」——現在の心境と原点への問いかけ
あのね、なんかね最近心がざわついてて
1番大事な事忘れてないかい?
冒頭の「あのね」という語りかけは、まるで親しい友人や仲間に話しかけているような親密さを感じさせます。この言葉選びには、ファンとの距離感を縮めたいという意図が込められているのではないでしょうか。
「心がざわついてて」という表現からは、バンドが大きくなるにつれて生じる様々なプレッシャーや葛藤が伝わってきます。しかし、そこで投げかけられる「1番大事な事忘れてないかい?」という問いは、自分自身への戒めでもあり、メンバー同士の確認でもあるように感じられます。音楽を始めた頃の純粋な気持ち、仲間と一緒に音を鳴らす喜び——それこそが「1番大事な事」なのかもしれません。
考察②:「バイト終わりの街スタ」——青春時代の原風景
バイト終わりの街スタで
とりあえず集まってなにする?
右も左も分からんかったけど
ただただワクワクしてたかったよな
「街スタ」とは、街中にあるリハーサルスタジオのこと。バイト終わりに集まってスタジオに入る——この光景は、多くのアマチュアバンドが経験してきた青春の一コマでしょう。「とりあえず集まって」という言葉からは、明確な目標がなくても仲間といることが楽しかった時代が浮かび上がります。
「右も左も分からんかった」という素直な告白は、当時の彼らがまだ音楽業界の何も知らない状態だったことを示しています。それでも「ただただワクワクしてたかったよな」と振り返る姿には、あの頃の純粋な情熱への郷愁と、そこに戻りたいという願望が込められているのではないでしょうか。
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考察③:「根拠もない自信ばっか持って」——若さゆえの無敵感
全て巻き込んで
俺たちならって
根拠もない自信ばっか持って
サビに入ると、歌詞の視点は「俺」から「俺たち」へと広がります。「全て巻き込んで」という表現には、周囲の人々——家族、友人、スタッフ、そしてファン——を自分たちの夢に巻き込んできたことへの自覚が感じられます。
「俺たちならって」という言葉に続く「根拠もない自信」は、若さゆえの無敵感を象徴しています。論理的な裏付けなどなくても、「この3人なら何とかなる」と信じられた時代。実際にSaucy Dogは、2015年にメンバー全員が脱退し石原一人になるという危機を乗り越え、現在のメンバーで再始動を果たしました。その経験があるからこそ、「根拠もない自信」の大切さを身をもって知っているのかもしれません。
考察④:「起き上がる度に強くなって」——困難を乗り越える絆
何かちょっとだけ
躓いたって
起き上がる度に強くなって
上を向いたって
何も見えなくて
不安だなんて言葉じゃ表せなくて
このパートでは、バンド活動における困難と成長が描かれています。「躓いたって」「起き上がる度に強くなって」という対比は、何度転んでも立ち上がってきた彼らの歴史そのものです。
特に印象的なのは「上を向いたって / 何も見えなくて」というフレーズ。一般的に「上を向く」は前向きな姿勢を表しますが、ここでは「見えない」という不安と結びついています。将来が見えない中でも前を向くしかない——そんな切実な心境が伝わってきます。「不安だなんて言葉じゃ表せなくて」という表現からは、言葉にできないほどの重圧を感じながらも、それでも音楽を続けてきた覚悟が読み取れます。
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考察⑤:「犬も喰わない」——バンドを”家族”に例える愛情
俺らの喧嘩って
なんかちょっと飲み込めないよな
「犬も喰わない」だろ?
タイトルにもなっている「犬も喰わない」は、「夫婦喧嘩は犬も食わない」ということわざに由来しています。これは「夫婦喧嘩はつまらないことが原因で起こり、すぐに仲直りするから、他人が関わるものではない」という意味。この慣用句をバンドの喧嘩に当てはめているのは、とても興味深い表現です。
ここで注目したいのは、バンド名「Saucy Dog」との呼応です。「生意気な犬」という意味のバンド名に、「犬も喰わない」という”犬”のモチーフを重ねることで、自己言及的な深みが生まれています。そして、夫婦喧嘩の慣用句を借りることで、バンドを「家族」に例えているとも解釈できます。「なんかちょっと飲み込めないよな」という言葉には、メンバー間の本音の関係性が垣間見え、それでも「犬も喰わない」——つまり、すぐに仲直りできる信頼関係があることが示唆されています。
考察⑥:「最期まで」——未来への誓い
されど俺らで
見えた幸せ
最期まで
楽曲のラストを飾るこのフレーズは、シンプルながら深い意味を持っています。「されど」という逆接の接続詞は、それまでの困難や不安を受けて、「それでも」という強い意志を表しています。
「俺らで見えた幸せ」という言葉には、この3人だからこそ見ることができた景色、たどり着くことができた場所への感謝が込められています。そして「最期まで」という締めくくりは、単なる「最後」ではなく、人生の終わりまでという強い覚悟を感じさせます。インタビューで石原が語った「これからもSaucy Dogとして最後まで向き合っていきたい」という言葉が、まさにこのフレーズに集約されているのではないでしょうか。
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バンド名と歌詞が織りなす自己言及的な世界観
「犬も喰わない」という楽曲タイトルは、単なることわざの引用にとどまりません。バンド名「Saucy Dog(生意気な犬)」に含まれる”犬”というモチーフを活かし、自分たちのバンド関係を「夫婦」のような親密な家族関係に例えている点が非常に興味深いです。
また、歌詞全体を通して使われる「俺たち」「俺ら」という一人称複数形は、バンドとしての一体感を強調しています。個人ではなく、常にグループとして語られる姿勢には、3人で一つという強い絆が表れています。せとゆいかがインタビューで「ライブでこの曲をやるのも楽しみ。ほかの曲とまた違った感情になりそう」と語っているように、この楽曲は演奏する側にとっても特別な意味を持つ一曲なのでしょう。
まとめ
「犬も喰わない」は、Saucy Dogが12年のバンド活動を振り返り、原点回帰と未来への決意を歌った楽曲です。バイト終わりにスタジオに集まっていた青春時代、根拠のない自信で突き進んできた日々、何度も躓きながらも起き上がってきた軌跡——そのすべてが「俺たちである意味」として肯定されています。
タイトルの「犬も喰わない」には、バンド内の喧嘩もすぐに仲直りできる家族のような関係性が込められており、バンド名「Saucy Dog」との自己言及的な呼応も見逃せません。石原慎也が「Saucy Dogを知っていれば知っているほど、よさをわかってもらえる曲」と語るように、彼らの歴史を知るファンにとっては、一層心に響く楽曲ではないでしょうか。
ぜひ、Saucy Dogの歩んできた道のりを想像しながら、この楽曲を聴いてみてください。あなたにとっての「1番大事な事」が、きっと見えてくるはずです。
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楽曲情報
- 曲名:犬も喰わない
- アーティスト:Saucy Dog
- 作詞:石原慎也
- 作曲:Saucy Dog
- リリース日:2025年12月17日
- 収録作品:9thミニアルバム『カレーライス』